千葉県や茨城県には、戦火で失われずに、令和になった今でも住み続けられている古民家が少なくありません。戦後に急ピッチで建てられた戸建て住宅とは違い、古民家には、日本家屋独特の良さがあります。
古民家は、すべてが木、畳、和紙、瓦などの自然素材で造られています。天然木材の柱や梁は、現代の家とは比べ物にならないくらい太く頑強に造られています。その一方、そこに住む家族にとっては、寒い、間取りと家族の生活スタイルがあわない、キッチンや浴室の使い勝手が悪いなど、暮らしにくさを感じる部分もあります。その結果、建て直しを計画されることもあるでしょう。
でも、せっかくの古民家を建て替えてしまうのは、あまりにもったいない話です。現代では手に入らないような建築美を持った古民家の良さは、建て替えではなく、改修して再生させる方法で行かせるからです。
古民家の良さ
近年、住み手のない空き家が増えている問題の原因は、「つくっては壊す」を繰り返してきた戦後の日本の家づくりです。安価で手軽に建てられる家のするため、新建材を多用した家を造り続けてきました。安価な新建材は自然素材と違い、経年劣化します。その結果、住宅ローンを払い終わる頃には、全面的にリフォームをする必要に迫られる住宅も少なくありません。
しかし、古民家はそうではありません。子や孫の代まで、十分に暮らせる家として造られています。本来、日本の家づくりとはそういう考えの基で行われていました。しかし、戦争で多くの人が家を失い、急ピッチでたくさんの住宅を建築しなくてはならなかった時代には、そのような家づくりはできませんでした。
経済が成長した時期に、家づくりの見直しが行われなかったことは非常に残念なことです。やっとここ数十年、住宅の質を向上するために、国が様々な施策を打ち出してきたところです。古民家は、そのような家づくりとは違った姿勢で造られた住宅です。木や畳、瓦など、日本古来の住宅建材を使い、在来工法で建てられています。その為、いったん解体し、使える建材は再利用して家全体を再生できます。
在来工法がツーバイフォーに比べて、間取りを変えやすいということは、多くの方がご存知だと思いますが、それに加えて、修理や修繕がしやすい家であるという特徴もあります。日本は地震が多い国であり、毎年のように、大型の台風に襲われる国でもあります。その為、古くから伝わる在来工法には、自然の猛威で損傷してしまった家を、修繕して使い続けるという先人の知恵が活かされているのです。
古民家再生で必要なこと
「イメージだけで古民家を語れば、良いことばかりかもしれないけれど、実際に暮らしている家族にとっては、暮らしにくさがたくさんある」
建て替えを計画されるご家族にはそういう思いがあると思います。でも、いくつかのポイントを抑えれば、古民家の良さを残しつつ、暮らしやすい家に生まれ変わらせることができます。
寒い
古民家には、深い軒、開けっ放しにできる障子や襖のおかげで、風通しが良いという特徴があります。湿度の高い日本では、快適な暮らしの為には、通気性が大切です。その為、屋根にも、壁にも、床にも、家の中のあらゆるところから、隙間風が出入りする造りになっているのです。夏には、風鈴の音を聞きながら、吹き抜けていく風を感じながら、畳の上でゴロンとするというような過ごし方ができます。ただし、その分、冬は非常に寒いのです。
また、土間が多いことも、冬の底冷えの原因です。古民家の多くには、玄関や、台所、勝手口などに広い土間が備わっています。現在は、玄関に小さな土間がある程度ですが、古民家の土間は、様々な用途に使える便利な場所です。土足のままでしたい作業や、炊事をする場所、訪問客と話をする場所など、いろいろなことに活用されます。ただ、地面からの距離が近いので、湿気や冷気が侵入しやすく、その冷気が家の中にも流れ込んでしまうのです。
リノベーションでの寒さに対する解決策として、天井、壁、床、サッシの断熱性の向上、土間の縮小があげられます。土間は便利な場所なので、すべて無くすのではなく、面積を狭める、冷えにくい床材を採り入れる、などの方法が理想的です。最近は、土間の人気が高まっていて、新築の家に土間を作りたいと希望する方も多くいます。せっかくの土間なので、現代に生活に合った使いやすい土間に作り替え、一部は残すべきでしょう。
土間だったダイニングキッチンから広々としたLDKに変更
家族の食事の場であるダイニングキッチンが土間だったので、冬は底冷えがして寒い場所でした。また、単体キッチンは使いにくく、収納も少なかったので、キッチンが散らかりやすい状態でした。
居室への段差が高く、お婆様の足元が不安でした。
リノベーション後のキッチンは、IH・食洗機・浄水器を備えた最新のシステムキッチンです。効率よく使える収納と、冷蔵庫、レンジ、トースター、炊飯器などキッチン廻りの家電の位置に合わせたコンセント増設によって、常にすっきりさせられるキッチンになりました。
床が上がったことと、家全体の断熱性が高まったことで、今後は暖かく、居心地の良いリビングダイニングで、家族の食事をお楽しみいただけます。
この古民家のリノベーションの全容はこちらからご覧いただけます。
断熱性・気密性の高いサッシに交換
気密性が低く、断熱性のない一枚ガラスのサッシだったので、隙間風が入り込み、冬は、暖房をしても、家中が寒い状態でした。
複層ガラスの入った断熱性の高いサッシに交換
一般的な住宅にはない贅沢な空間である広縁で、冬は日向ぼっこができるようになりました。
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地震への不安
築年数が長くなってくると、家全体は頑強に造られていても、耐震性に不安が出てきます。そのような場合には、金物補強や筋交など耐震補強を行うリノベーションで、建物を強く、丈夫に改修できます。
大雨による浸水被害を受け続けていたため、一部構造材が腐朽し、木耐協による診断の結果、倒壊の可能性のある数値出ていました。
今後の大雨による浸水に備え、家を曳いて土と基礎を入れ、建物を戻しています。
リノベーションによって、元の古民家の良さを失わないよう、使える建具、構造材はすべて使い、以前の雰囲気も感じられる空間に仕上げました。
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プライバシーを保ちにくい間取り
古民家には、繋がっている部屋と部屋が襖で区切られている間取りが多くあります。このような間取りには、親類が集まった時には、襖を外すと大広間になり、普段はそれぞれの部屋として使える良さがあります。もちろん風も良く通るので、夏は涼しく過ごせます。
ただ、この間取りには、玄関や、他の部屋への移動時に、どれかの部屋を横切らなくてはならないという問題点もあります。家には、家族が揃って団欒できる部屋の他に、一人一人が自分の時間を持てる部屋も必要です。ところが、部屋を横切らないと移動ができない間取りでは、その時間を持てなくなる可能性があります。
この古民家もそのような間取りでした。
リノベーション後は、2つの和室を残し、それぞれの部屋に他の部屋を横切らなくても移動できる間取りに変わりました。
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歴史を感じる立派な梁の残しつつシンプルで和モダンに生まれ変わった古民家
今回ご紹介した古民家のリノベーションは、梁や柱を再利用し、元の家の風合いの良さ、日本家屋の良さを残し、暮らしやすさを採り入れたケースです。
どんな住宅であっても、断熱改修、耐震改修、間取り変更、住宅設備機器の入れ替えなどによって、新築のように生まれ変わります。
建て替えをご検討中の方は、リノベーションも選択肢に入れてみませんか?建て替えより費用を抑えられると同時に、大切な元の家の良さも残すことができます。
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リフォームやリノベーションを検討し始めると、どのくらいに期間と費用がかかるのだろう?工事中はどうやって生活するのかしら?など、様々な疑問が出てきます。どんなことでも、どうぞご相談ください。大事な持ち家を大切にしながら、より暮らしやすい家にすることが、RenoBASE8の基本です。より良い暮らしができる家にしたいという想いを叶えるお手伝いをさせてください。